店長職を辞めたい場合、「自分が辞めたら店が回らなくなる」「後任が決まるまで辞められない」と言われることがあります。退職代行を使いたくても、「管理職の店長でも利用できるのか」「引き継ぎをしないと損害賠償されるのではないか」と不安を抱えている人も少なくありません。
しかし、店長だからといって退職の自由がなくなるわけではありません。会社は人手不足や後任不在を理由に店長の退職を拒否することもできません。もっとも、一般社員とは異なり、店長にはシフト管理や売上管理、店舗運営などの責任があるため、退職代行を利用する際には知っておくべき注意点もあります。
この記事では、店長でも退職代行を利用できる理由や即日退職の条件、引き継ぎや損害賠償の問題、弁護士へ依頼するメリットについて解説します。
【結論】
・店長でも退職代行は問題なく利用できる
・人手不足や後任不在を理由に退職を拒否することはできない
・有給休暇を利用すれば実質的な即日退職が可能なケースもある
・引き継ぎをしなかっただけで損害賠償が認められることは通常ない
・店長特有のトラブルが予想される場合は弁護士への依頼が安心
・退職代行を利用しても店長だから不利になるわけではない
店長でも退職代行は使える

店長として働いている人の中には、「責任者だから退職代行は使えないのではないか」と考える人もいます。しかし、店長という役職だけを理由に退職代行の利用が制限されることはありません。
実際には、店長であっても一般社員と同様に退職する権利があります。また、人手不足や後任不在を理由に退職を拒否されることもありません。まずは、店長が退職代行を利用できる法的な理由を確認していきましょう。
店長という役職だけで退職を断ることはできない
店長は店舗運営の責任者であることが多く、一般社員よりも重要な役割を担っています。しかし、店長だからといって会社が退職を拒否できるわけではありません。正社員など期間の定めのない雇用契約(正社員)であれば、労働者は民法で保護されています。退職代行は、退職の意思を本人に代わって会社へ伝えるサービスとなり、弁護士に依頼すれば、法的説明・交渉が可能のため、話がこじれることもあまりありません。
「名ばかり管理職」の店長は労働基準法の保護が受けられる
管理監督者の場合、通常の労働法が適用されない場合がありますが、多くの小売店やサービス業の店長は、法律上の管理監督者に該当しないケースがほとんどです。
実際には、アルバイトのシフト管理や店舗運営を任されているだけで、採用権限や人事権限がなく、給与や待遇も一般社員と大きく変わらないケースがほとんどであり、この場合は正社員と同様に残業代なども請求できますし、法的に退職の自由があります。
人手不足・後任不在を理由に引き止めることも違法
店長が会社側に退職を申し出ると、
「後任が見つかるまで待ってほしい」
「今辞められると店が回らない」
と言われることがあります。
しかし、人手不足や後任不在は会社側の人員配置の問題です。労働者に退職の自由が認められている以上、会社は人手不足を理由に退職そのものを禁止することはできません。実際、退職代行を利用する店長の多くが、人員不足や長時間労働に悩んでいます。
会社の事情を理由に退職を先延ばしにされている場合でも、法律上は退職の意思表示を行うことが可能です。
店長が「即日退職」できる条件

店長として働いている人の中には、「責任者だから即日退職はできない」と考えている人もいるかもしれませんし、会社にそう言われた人もいるでしょう。しかし、店長であっても段取りをしっかりと踏めば出社を止めることは可能です。
実際には、有給休暇の残日数や職場環境によっては、退職代行を利用した当日から出社しなくなるケースも少なくありません。ここでは、店長が実質的な即日退職を実現できる代表的なケースを解説します。
有給休暇が残っている場合(最も多いケース)
店長の即日退職で最も多いのが、有給休暇を利用するケースです。普段休めないおかげで、手つかずの有給がたくさん溜まっている人は多いのでは。例えば、有給休暇が20日残っている状態で退職代行を利用した場合、出社最終日以降は有給消化に入り、そのまま退職日を迎えられる可能性があります。
この場合、法律上の退職日が当日になるわけではありませんが、本人は退職代行を利用した日から出社しなくて済みます。一般的に退職代行でいう「即日退職」の多くは、この有給消化によるケースを指しています。
パワハラ・長時間労働など劣悪な環境がある場合
職場環境が深刻な状態にある場合は、即日で出社を止める必要性が高いこともあります。例えば、店長に対するパワハラが続いている場合や、慢性的な長時間労働によって心身に不調が生じている場合です。
また、医師の診断書がある場合には、会社との話し合いの中で退職日や出社義務について柔軟な対応が取られるケースもあります。証拠を用いて会社側に違法労働やパワハラを認めさせることができれば、法的に即日退職も可能となります。
民法627条の2週間ルールと、有給で実質即日退職する仕組み
正社員など期間の定めのない雇用契約の場合、民法627条では退職の意思表示から2週間が経過すると雇用契約が終了するのが原則です。そのため、法律上は退職の意思を伝えた当日に雇用契約が終了するわけではありません。
一方で、有給休暇が残っている場合は、この2週間を有給消化期間に充てることができます。
有給休暇をすでに使い切っている場合は当日付けで退職する交渉を行います。会社からしても、すでに出社の意思がない従業員の社会保険を払い続けるのは無駄だと考えるためです。
店長だからといってこのルールが変わるわけではありません。退職代行を利用した場合でも、法律上の退職日と実際の最終出社日は別であることを理解しておくことが大切です。
民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用元:e-gov
店長が退職代行を使うとき心配な「引き継ぎ問題」

店長が退職代行の利用をためらう理由として多いのが引き継ぎの問題です。一般社員とは異なり、店長はシフト管理や売上管理、アルバイト教育など店舗運営に関わる業務を担当しています。
そのため、辞めようにも後任がいないため辞められない状況にある店長が多く存在します。会社からも「君が辞めたらだれがこのお店を引き継ぐの」、「損失分は補填してもらうよ」と脅しのように言われることもあるでしょう。
しかし、引き継ぎが終わるまで退職できないというルールはありません。ここでは、店長が退職代行を利用する際の引き継ぎについて解説します。
法律上、引き継ぎに応じる義務はない
退職する際に引き継ぎを行うことは、社会人として望ましい対応です。しかし、法律上は「引き継ぎを完了しなければ退職できない」という決まりはありません。
そのため、引き継ぎが終わっていないことを理由に会社が退職を拒否することはできません。実際、退職代行を利用する人の中には、上司との関係悪化やハラスメントなどの理由から出社が困難になっているケースもあります。
店長しか知らない業務がある場合はどう対処するか
一方で、店長しか把握していない情報がある場合は注意が必要です。例えば、重要な取引先とのやり取りや発注業務の状況、店舗運営に必要なパスワード管理などです。このような情報を一切残さず退職すると、会社側とのトラブルに発展する可能性があります。
退職代行を利用する場合でも、可能であれば簡単な引き継ぎメモを作成したり、必要な情報を会社へ渡したりしておくとよいでしょう。もっとも、退職後に本人が会社へ出向いて引き継ぎを行う義務まではありません。
シフト・売上管理・備品の鍵はどうなるか
店長の場合、シフト表や売上データ、店舗の鍵などを管理していることがあります。これらについては、退職時に会社へ返却または引き渡しが必要になるケースが一般的です。特に店舗の鍵やセキュリティカード、会社支給のスマートフォンなどは、退職後のトラブルを防ぐためにも速やかに返却した方がよいでしょう。郵送で送るか、退職日の前日にデスクやロッカーに入れて、他の従業員に分かるようにするといいでしょう。
また、シフトや売上データについても、退職代行に依頼する前に会社が確認できる状態にしておけば、その後の問い合わせや連絡を減らせる可能性があります。
店長だからといって特別な引き継ぎ義務が発生するわけではありませんが、最低限の情報整理を行っておくことで円満な退職につながりやすくなります。
「損害賠償されるのでは?」店長が最も心配するリスクの実態

店長が退職代行を利用するとき、多くの人が気にするのが損害賠償の問題です。実際には、店長だからという理由だけで損害賠償責任を負うことはありません。ただし、退職の仕方や退職前後の行動によっては例外もあります。ここでは、店長の退職と損害賠償の関係を解説します。
人手不足による損害は原則として請求できない
店長が退職したことで売上が落ちたり、人手不足になったりしても、それだけで損害賠償請求が認められることは通常ありません。なぜなら、人員配置や後任の採用は会社が負うべき経営上の責任だからです。
「店長が辞めたせいで営業が回らなくなった」「アルバイトが不足して売上が下がった」「後任店長が見つからなかった」といった事情は、会社側の問題として扱われます。そのため、人手不足や後任不在を理由に損害賠償を示唆されたとしても、過度に不安になる必要はありません。
実際に賠償リスクが生じるのはどんなケース?
一方で、どのような退職でも絶対に損害賠償が発生しないわけではありません。会社へ損害を与える目的で売上データを削除した場合や、店舗の鍵や備品を故意に返却しない場合、顧客情報を無断で持ち出した場合などは別問題です。
また、退職そのものではなく、退職前後の行為によって会社へ実害を与えた場合には責任を問われる可能性があります。もっとも、通常の退職代行利用者が該当するケースは多くありません。単に退職代行を利用したことや、店長という立場で退職したことだけを理由に損害賠償が認められるわけではないことを理解しておきましょう。
店長の退職代行は一般業者ではなく弁護士に依頼すべき理由

店長の退職では、一般社員よりもトラブルが起こりやすい傾向があります。人手不足による引き止めや退職日の調整、引き継ぎを巡る問題など、会社との話し合いが必要になるケースも少なくありません。そのため、店長が退職代行を利用する場合は、依頼先選びが重要になります。
退職日・条件の交渉ができるのは弁護士だけ
退職代行サービスには民間業者や労働組合が運営するものもあります。しかし、退職日や有給休暇の取得、未払い残業代などについて会社と交渉できるのは弁護士だけです。店長の場合、「退職日を延ばしてほしいと言われる」、「有給消化を認めてもらえない」、「引き継ぎを理由に退職を拒否される」といった問題が発生することがあります。
このような場面では、会社との法的交渉が必要になるため、弁護士へ依頼する必要があります。
損害賠償を請求されたとき代行業者では対応できない
店長の退職では、会社から損害賠償を示唆されるケースがあります。もっとも、実際に認められるケースは限られています。ただし、会社から内容証明郵便が届いたり、損害賠償を請求すると言われたりした場合、民間の退職代行業者は対応できません。法律上の交渉や代理人としての活動は弁護士しか行えないためです。万が一のトラブルに備えるという意味でも、責任者である店長は弁護士への依頼が適している場合があります。
店長の退職代行でよくあるトラブル
店長の退職相談では、一般社員には少ない特有のトラブルが見られます。
・後任が決まるまで辞めさせないと言われる
・店舗の売上低下の責任を負わせようとされる
・アルバイトのシフトを理由に退職を先延ばしにされる
といったケースです。
もしこれらを盾に退職を拒否されそうであれば、弁護士法人が提供する退職代行に一度相談されることをおすすめします。
実際、会社側は法的根拠のない主張がほとんどのため、弁護士が対応することで会社側の主張の大部分を退けることが可能です。
店長が退職代行を使う流れ(相談〜退職完了)
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店長だからといって、退職代行の利用手順が特別に変わるわけではありません。基本的には相談後に退職代行が会社へ連絡し、退職届の提出や貸与物の返却を進めながら退職日を迎えます。ここでは、退職代行へ相談してから退職が完了するまでの流れを解説します。
1.退職代行へ相談する
まずは退職代行へ相談します。
現在の勤務状況や雇用形態、有給休暇の残日数、会社とのトラブルの有無などを伝えます。
店長の場合は、人手不足や引き継ぎ問題、損害賠償を示唆されている事情などもあれば相談時に共有しておきましょう。
2.退職代行が会社へ退職の意思を伝える
依頼後は、退職代行が本人に代わって会社へ連絡します。弁護士に依頼する場合、委任契約をしたのち、会社に受任通知を送付する必要があるため、日数には余裕を持ちましょう。退職の意思や希望する退職日、有給休暇の取得希望などを伝え、退職手続きを進めます。
3.退職届の提出や貸与物の返却を行う
会社から支給されている社員証や制服、店舗の鍵、パソコンなどがある場合は返却します。また、退職届の提出が必要な場合は郵送で対応することが一般的です。店長の場合は鍵や売上資料などを管理しているケースもあるため、返却漏れがないよう確認しておきましょう。
4.有給消化または退職日を迎える
有給休暇が残っている場合は、そのまま有給消化に入るケースが多くあります。有給休暇がない場合でも、会社との調整を経て退職日を迎えます。
退職後は離職票や源泉徴収票などの書類が郵送され、手続きは完了です。店長であっても、退職代行を利用したからといって特別な手続きが増えるわけではありません。不安な点がある場合は、事前に退職代行へ確認しながら進めるとよいでしょう。
店長の退職代行に関するよくある質問
店長の退職代行について、相談者からよく寄せられる質問をまとめました。
退職代行を使うと転職先にバレますか?
退職代行を利用した事実が転職先へ通知されることはありません。また、離職票や源泉徴収票などの退職書類に退職代行を利用したことが記載されることもありません。
シフトを組んでいる途中でも辞められますか?
辞められます。シフト作成は店舗運営上の業務ですが、シフトを組んでいることを理由に退職を禁止することはできません。
オーナー直営店の店長でも使えますか?
利用できます。個人経営の店舗やオーナー直営店であっても、労働者である以上は退職する権利があります。オーナーから強く引き止められている場合でも、退職代行を利用することは可能です。
退職後の書類(離職票など)は受け取れますか?
受け取れます。退職代行を利用した場合でも、会社には離職票や源泉徴収票などの必要書類を交付する義務があります。

