退職代行で損害賠償事例|脅されない対処法【弁護士解説】

退職代行で損害賠償事例|脅されない対処法【弁護士解説】

退職代行を利用したあとに「損害賠償を請求する」と会社から連絡が来た。 近年、退職代行サービスの普及とともにこうした不安を抱える相談が増えています。

実際に企業が損害賠償を求めるケースはありますが、その多くは法的根拠が乏しく「脅し」や「誤解」に基づくものです。

本記事では、退職代行で発生し得る損害賠償トラブルの実例と結果をもとに、弊所弁護士法人みやび在籍の弁護士がリスク回避と対処法を解説します。

退職代行で損害賠償を請求された実例と結果

退職代行で損害賠償を請求された実例と結果

退職代行を利用して辞めた社員に対して、企業が損害賠償を請求するケースは決して多くはありません。しかし、退職の仕方や業務内容によっては、請求を受ける可能性がゼロではないのも事実です。ここでは、実際に発生した代表的な3つの事例を紹介し、それぞれの結果と法的判断を弁護士の視点から整理します。

事例1|引き継ぎ不足を理由に請求されたケース

最も多いのが「引き継ぎをせずに退職したため損害が生じた」と企業が主張するケースです。たとえば、担当していた顧客の案件が一時的に滞った、社内で業務分担に混乱が生じたといった理由で「損害賠償を請求する」と通告されることがあります。

しかし実際には、引き継ぎの不備だけで損害賠償が認められることはほとんどありません。裁判では「業務上の混乱」は抽象的損害とされ、具体的な金銭的損失を証明できなければ請求は棄却されます。つまり、引き継ぎ不足は会社側がよく使う“脅し文句”にすぎないケースが大半です。

事例2|機密情報の持ち出しで企業から訴えられた事例

一方で、会社の営業資料や顧客データなどの機密情報を外部に持ち出した場合は注意が必要です。このような行為は、就業規則や誓約書に違反し、損害賠償の対象となる可能性があります。特に転職先が競合企業の場合、情報漏えいによる営業損害を主張されるリスクが高まります。ただし、単に自分の業務メモや成果物を持ち帰った程度では「損害」とは認められません。

重要なのは、退職前に会社のデータをコピー・共有しないこと。不安な場合は、退職代行を通じて「私物と会社データの線引きを明確化」してもらうと安全です。

事例3|無断欠勤と判断され損害賠償を求められたケース

退職代行を利用した際、会社に連絡が届かず「無断欠勤」と誤解されるケースもあります。その結果、「突然来なくなった」「業務に支障が出た」として損害を請求されることがあります。しかし、退職代行業者が正式に退職の意思を伝えていれば、法的には「退職意思表示済み」であり、無断欠勤とはなりません。

このようなケースでは、弁護士が介入することで会社側の請求が取り下げられる事例が多く見られます。重要なのは、業者選びの段階で「会社との連絡記録を証拠として残す体制」があるかを確認することです。

退職代行で損害賠償請求が発生する典型的な状況

退職代行で損害賠償請求が発生する典型的な状況

退職代行を利用した場合でも、すべてが安全とは限りません。ごく一部のケースでは、会社が「損害が発生した」と主張し、損害賠償請求を検討することがあります。その多くは誤解や感情的な反応によるものですが、一定の行為が法的リスクに発展する可能性も否定できません。ここでは、弁護士が過去の相談から整理した「損害賠償が発生しやすい典型パターン」を紹介します。

引継ぎを一切せずに即日退職した場合

最も多いのが、引継ぎを行わずに即日退職したケースです。民法627条では、期間の定めのない雇用契約は「2週間前に退職の意思を示せば退職できる」とされています。つまり、法律上は即日退職が認められていません。このため、無断で業務を放棄したとみなされると、会社側が「損害が出た」と主張することがあります。

ただし、実際に損害賠償が成立するには、会社が具体的な金銭的被害(例:顧客契約の解約・売上損失)を証明しなければなりません。「引継ぎ不足=損害」ではなく、損害額を立証できない限り、法的に請求は認められません。

機密情報や顧客データを持ち出した場合

退職直前に社内情報を私的に持ち出した場合、これは損害賠償請求の対象となる可能性があります。特に営業職や管理職など、顧客データ・価格情報・社内マニュアルを扱う立場の人は注意が必要です。情報漏えいは不正競争防止法にも触れる可能性があり、会社が損害額を算定して法的措置を取るケースも存在します。ただし、業務メモやスケジュール表のように「個人的な業務補助資料」であれば、損害とみなされることはほとんどありません。境界が曖昧な場合は、退職前に退職代行業者または弁護士に相談し、不要な誤解を避けるようにしましょう。

退職代行業者の対応不備によるトラブル

稀に、退職代行業者が会社への連絡を怠り、退職意思が正しく伝わらなかった結果、トラブルに発展することがあります。たとえば、会社が「連絡を受けていない」と主張し、本人が無断欠勤扱いされてしまうケースです。この場合、企業が「人員不足で損害が出た」と言いがかりをつけてくることもあります。しかし、これは退職者本人の責任ではなく、業者側の過失です。

退職代行利用中に発生し得る損害賠償請求は実際に認められるのか?【弁護士の見解】

退職代行利用中に発生し得る損害賠償請求は実際に認められるのか?【弁護士の見解】

「退職代行を使ったことで損害賠償を請求された」という話を聞くと、多くの人が不安になります。しかし、実際に損害賠償が法的に認められるケースはごくわずかです。ここでは、過去の裁判例や法律の原則をもとに、会社がどのような場合に請求できるのかを弁護士の視点から解説します。

過去の裁判例から見る企業側の勝訴率

結論から言うと、退職を理由とした損害賠償請求で会社側が勝訴した事例は極めて少数です。多くの裁判では、企業が主張する「損害の発生」を立証できず、請求が棄却されています。たとえば「突然辞めたせいで業務が滞った」「顧客対応が遅れた」といった抽象的な損害では、 裁判所は「経済的損失を具体的に証明できない」として認めません。損害賠償が成立するためには、実際の金銭的被害が発生していること、 そしてその原因が退職者本人の「故意または重大な過失」によるものであることを会社が証明する必要があります。この証明は非常にハードルが高く、実務上はほとんど成立しません。

労働者に損害賠償義務が発生する法的条件

労働者に損害賠償義務が認められるのは、以下の3つの条件がすべて揃った場合に限られます。

  1. 退職者の行為によって会社に実際の損害(売上減少・契約破棄など)が発生していること
  2. その損害が退職者の故意または重大な過失によるものであること
  3. 会社が損害額を具体的に算定・立証できること

たとえば、退職前に顧客データを削除したり、競合企業に営業情報を漏らしたような場合は「故意の損害」として賠償が認められる可能性があります。しかし、引継ぎが不十分・連絡が取れないといった理由だけでは法的責任は発生しません。また、会社が感情的に「訴える」と脅すだけでは、実際に訴訟を起こすことはほとんどありません。もし請求を受けたとしても、弁護士に相談すれば法的根拠の有無をすぐに判断できます。

退職代行を使って会社から損害賠償請求されて脅されたときの正しい対処法

退職代行を使って会社から損害賠償請求されて脅されたときの正しい対処法

「退職代行を使うなら損害賠償を請求するぞ」 「引き継ぎをしなければ訴える」 このような言葉を会社から投げかけられ、不安に感じる人は少なくありません。しかし、ほとんどの場合は“脅し文句”であり、法的効力を持つものではありません。ここでは、実際に脅された・請求を受けたときに取るべき3つの対処法を弁護士の立場から解説します。

電話や書面で損害賠償を請求された際の対応

会社から電話やメールで「損害賠償を請求する」と言われても、まずは冷静に対応しましょう。相手が感情的になっている場合、話し合いを続けるとさらにトラブルが拡大するおそれがあります。このような場合は、会社との直接連絡を避け、退職代行業者または弁護士を通してやり取りを行うのが基本です。また、脅迫的な発言や請求書を受け取った場合には、通話録音やメール保存など「証拠を残す」ことが重要です。 実際の訴訟に発展するケースはごくまれですが、万が一に備えて記録を保全しておきましょう。

弁護士への無料相談を活用する方法

損害賠償請求を受けた、または脅迫的な連絡が来た場合は、早めに弁護士へ相談してください。弁護士であれば、会社の請求内容に法的根拠があるかどうかを即座に判断し、 必要に応じて内容証明で反論や通知を出すことも可能です。また、弁護士に依頼することで、本人が会社と直接やり取りする必要がなくなり、精神的な負担も軽減されます。初回無料相談を行っている法律事務所も多いため、早い段階で専門家のサポートを受けることが、結果的に最も安全な解決につながります。

退職代行業者への再相談で交渉を継続する

退職代行サービスを利用した場合、まずは担当業者に現状を共有し、会社との再交渉を依頼しましょう。信頼できる業者であれば、状況を整理し、会社に対して冷静に再度意思を伝えてくれます。ただし、非弁業者(弁護士資格のない業者)は、会社との法的交渉ができません。このため、損害賠償や金銭請求などの話題になった時点で、弁護士が運営する退職代行へ切り替えることをおすすめします。弁護士型の退職代行であれば、会社からの請求にも合法的に対応でき、トラブルを早期に収束できます。

損害賠償請求されないための退職代行の使い方

損害賠償請求されないための退職代行の使い方

退職代行を使ったからといって損害賠償を請求されることはほとんどありません。しかし、使い方を誤ると「引継ぎ不足」や「非弁行為による違法対応」といったリスクが発生することもあります。ここでは、弁護士の立場から見た“安全で確実に退職するためのポイント”を解説します。

弁護士運営の退職代行サービスを選ぶ重要性

最も大切なのは「どの退職代行に依頼するか」です。一般的な民間業者の場合、会社と直接交渉する権限がなく、損害賠償請求の話が出た途端に対応が止まってしまうことがあります。一方で、弁護士が運営する退職代行であれば、法律に基づいた正式な退職通知を行えるだけでなく、 退職日・有給休暇・残業代などの交渉も合法的に代行可能です。さらに、会社からの「請求」や「脅し」にも法的根拠をもって反論できるため、最もリスクの少ない方法といえます。

引き継ぎ資料と退職理由を事前に準備する方法

退職代行を使う場合でも、「引き継ぎを全くしない」は望ましくありません。最低限の業務メモやデータ整理を事前に行っておくことで、会社側の「損害主張」を防止できます。また、退職理由を「家庭の事情」「体調不良」などの一般的でトラブルになりにくい表現にしておくことも重要です。感情的なやり取りや批判的な文言を避け、誠実な対応を心がけることで、会社側が損害賠償を持ち出す余地を減らせます。弁護士に相談すれば、トラブルを避けるための文面チェックも可能です。

弁護士法人みやびの退職代行サービス|損害賠償リスクに強い理由

弁護士法人みやびの退職代行サービス|損害賠償リスクに強い理由

「会社に損害賠償を請求すると言われて不安」「退職を切り出せず毎日がつらい」 そんな方は、弁護士が直接対応する退職代行を選ぶことで、法的に安全かつ確実に退職できます。弁護士法人みやびでは、全国対応で退職手続きから損害請求への対応までワンストップでサポートしています。

弁護士による法的交渉で企業対応も可能

弁護士法人みやびの退職代行は、民間業者ではできない「企業との交渉」「損害賠償への法的対応」まで一括対応可能です。退職届の提出、有給休暇の交渉、退職金・残業代の請求など、すべて弁護士が代理で行うため、依頼者が会社と直接連絡を取る必要はありません。法的に認められた正規の手続きによって、トラブルを最小限に抑えながら退職を完了できます。

無料相談で退職前のリスクを事前診断

「この状況で本当に辞められるのか」「損害賠償を請求される可能性は?」 そんな疑問にも、弁護士が無料でアドバイスします。 LINE・メール・電話いずれでも相談可能で、希望すればそのまま正式依頼も可能です。 相談の段階から弁護士が対応するため、誤った判断による損失を防ぎ、安心して退職までのステップを進められます。

弁護士法人「みやび」にご相談を

弁護士法人「みやび」は全国の「会社を辞めたいけど辞められない」人に退職代行サービスを提供しています。LINE無料相談・転職サポート・残業代等各種請求にも対応しており、2万7500円(税込)から承っています。まずはお気軽にご相談ください。
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佐藤 秀樹

弁護士

平成12年慶應義塾大学法学部法律学科卒。
平成15年に司法試験合格後、片岡法律事務所入所。債権回収、相続問題といった一般民事事件から、M&A、事業再生、企業間取引、労務管理、知的財産権などの企業法務まで、数多くの実務に従事する。
平成19年からは慶應義塾大学法科大学院講師(実務家ゼミ担当)及び慶應義塾大学法学研究所講師を務める。
平成21年に弁護士法人みやびを開設し、現在に至る。

退職代行と損害賠償に関するよくある質問

ここでは、退職代行の利用にあたって「損害賠償を請求された」「脅された」といった不安を抱く方のために、弁護士の立場からよくある質問に回答します。法律・制度・対応方法を理解して、安全に退職を進めましょう。

Q1. 退職代行を使っただけで損害賠償を請求されることはありますか?

いいえ、退職代行を利用しただけで損害賠償を請求されることはありません。労働者には退職の自由があり、代行業者を通じて意思を伝えることは正当な行為です。請求されるケースの多くは誤解や脅しに過ぎません。

Q2. 実際に損害賠償請求が認められるケースはありますか?

極めてまれです。損害賠償が成立するには「実際の金銭的損害」と「退職者の故意または重大な過失」の両方を会社が立証する必要があります。単なる引継ぎ不足や欠勤では法的に認められません。

Q3. 「引き継ぎしなかった」として会社から請求された場合はどうすればいいですか?

まずは冷静に対応し、退職代行業者または弁護士に相談してください。引き継ぎ不備を理由に損害賠償が認められることはほぼありません。会社の主張が感情的な脅しである可能性が高いです。

Q4. 損害賠償を請求するという電話やメールが来た場合の対応は?

会社から脅迫的な電話やメールが届いた場合は、直接応じずに証拠を残しましょう。録音・スクリーンショット・メール保存などが有効です。その上で弁護士に相談すれば、法的に適切な対応を取ることができます。

Q5. 機密情報を持ち出していないのに「情報漏えいだ」と言われた場合は?

まずは落ち着いて事実確認を行いましょう。業務上のメモや自分の成果物を持ち帰っただけであれば、損害賠償の対象にはなりません。退職代行を通じて「私物と会社データを区別している」と伝えるのが効果的です。

Q6. 退職代行業者が会社に連絡していなかった場合、責任は自分にありますか?

いいえ、ありません。会社への連絡を怠ったのは業者側の過失であり、依頼者に法的責任は及びません。念のため、退職代行を依頼する前に「連絡完了を証明できる体制」があるか確認しましょう。

Q7. 弁護士に相談するメリットは何ですか?

弁護士であれば、損害賠償請求の法的根拠をその場で判断し、内容証明による反論や交渉が可能です。また、会社との直接連絡を避けられるため、精神的な負担を大幅に軽減できます。

Q8. 退職代行サービスを選ぶ際に注意すべき点は?

「弁護士運営」かどうかを確認することが最重要です。弁護士が対応していない業者は、会社と交渉する権限がなく、損害賠償の話になった途端に対応が止まることがあります。必ず法的権限のあるサービスを選びましょう。

Q9. 会社が本当に訴訟を起こしてきた場合はどうなりますか?

損害賠償請求訴訟が起こされても、実際に損害額を証明できなければ棄却されるケースが大半です。弁護士が代理人として対応すれば、手続きや反論をすべて任せられます。焦らず専門家に相談しましょう。

Q10. 弁護士法人みやびではどのようなサポートをしていますか?

弁護士法人みやびでは、退職代行をはじめ、損害賠償請求・有給休暇・残業代請求など、退職に伴う法的トラブルを一括サポートしています。全国どこからでもLINE・メール・電話で無料相談が可能です。

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