労働組合が運営する退職代行サービスについて調べていると、「違法ではない」「合法だから安心」といった説明を目にすることがあります。一方で、「非弁行為にあたるのではないか」「会社から違法だと言われたらどうなるのか」と不安を感じる人も少なくありません。
結論から言うと、労働組合が行う退職代行は、すべてが違法になるわけではありません。しかし、退職代行の内容や関与の仕方によっては、非弁行為として違法と判断されるリスクがあります。「労働組合だから安心」「違法ではないと説明されたから大丈夫」と考えるのは危険であり、実際には適法と違法の境界線を正しく理解することが重要です。
本記事では、労働組合の退職代行が違法になるケースとならないケースを整理し、どのような点に注意すべきかを弁護士の視点で解説します。
労働組合の退職代行は違法になるのか

労働組合が関与する退職代行について調べていると、「労働組合なら違法ではない」「民間業者より安全」といった説明を目にすることがあります。
一方で、非弁行為に該当するのではないか、会社から違法だと指摘されたらどうなるのかと、不安を感じている人も少なくありません。この点を正しく理解するためには、労働組合という立場そのものではなく、実際に行われる退職代行の中身に注目する必要があります。
結論:労働組合の退職代行が直ちに違法とは限らない
結論から言うと、労働組合が行う退職代行が直ちに違法と判断されるわけではありません。労働組合には団体交渉権が認められており、労使関係に関する一定のやり取りを行うこと自体は、法律上想定されています。そのため、退職の意思を会社に伝える行為が、単なる意思表示の伝達にとどまる場合には、違法と評価される可能性は低いとされています。
ただし、この点だけをもって「労働組合の退職代行は安全」「違法の心配はない」と判断するのは適切ではありません。実務上は、どこまで踏み込んだ対応をしているかによって大きく変わるためです。
退職代行で労働組合ができること・できないこと

労働組合が退職代行として関与できる範囲は、労働組合法上の団体交渉権と、弁護士法の趣旨を踏まえて判断されます。労働組合という立場があるからといって、退職に関するあらゆる対応が無制限に許されるわけではありません。どこまでが適法と評価されやすく、どこからが問題になり得るのかを整理して理解することが重要です。
法律上認められている意思伝達の範囲
労働組合には団体交渉権が認められており、労働条件等に関する交渉を行うこと自体が直ちに違法になるわけではありません。そのため、退職に伴うやり取りの中でも、労使関係の枠内で行われる一定の交渉が想定される場面はあります。
また、本人に代わって退職の意思を会社に伝える行為や、事実関係を伝達する行為については、一般に意思伝達の範囲にとどまるものと理解されています。こうした対応に限られている限り、違法となる可能性は低いと言えます。
労働組合でも対応できない行為
ただし、「労働組合の退職代行なら何でも交渉できる」というわけではありません。注意すべきポイントは主に三つあります。第一に、交渉の中身が損害賠償や金銭請求など、法的紛争の解決に踏み込んでいないかという点です。第二に、退職代行を報酬目的で反復継続して扱う仕組みになっていないかという点です。第三に、そもそも組合に実体があるかという点です。
例えば、損害賠償責任がないことを前提に免責を求める、法的評価を断定したうえで会社に対応を迫る、未払い賃金などの支払いを求めるといった対応は、内容次第で弁護士法との関係が問題になり得ます。
また、実体のない名ばかりの組合が、退職代行を中心に組織的に活動している場合には、適法性が強く疑問視されることになります。そのため、労働組合の退職代行を利用する際には、どのような目的と範囲で関与するのか、組合の実体や報酬の仕組みはどうなっているのかを事前に確認し、対応が逸脱していないかを慎重に見極める必要があります。
労働組合の退職代行が違法と判断されやすいケース

労働組合が関与する退職代行であっても、対応の内容や実態によっては違法と判断されやすいケースがあります。問題になるのは、労働組合という形式そのものではなく、団体交渉権の範囲を逸脱していないか、また組合としての実体があるかどうかです。ここでは、実務上とくに注意すべき代表的なケースを整理します。
団体交渉権を超えた対応をしている場合
労働組合には団体交渉権が認められており、労働条件等について会社と交渉すること自体は制度上想定されています。しかし、退職代行の場面で行われる対応が、法的紛争の解決を目的とする内容に踏み込んだ場合には、団体交渉権の範囲を超えているとみなされやすくなります。
例えば、損害賠償責任の有無を前提に免責を求める、法的評価を断定して会社の対応を拘束しようとする、金銭請求の可否を整理したうえで支払いを迫るといった行為は、単なる労使交渉を超えた対応と受け取られる可能性があります。このような行為が第三者によって報酬目的で行われている場合には、弁護士法との関係が問題になりやすく、違法と判断されるリスクが高まります。
実態が労働組合ではない名ばかり組合の問題
もう一つ注意すべきなのが、形式上は労働組合を名乗っていても、実態が伴っていない名ばかり組合の存在です。労働組合としての実体がなく、退職代行業務を行うためだけに設立された組織である場合には、団体交渉権を根拠に適法性を主張することは困難になります。
組合員の実態がない、継続的な組合活動が確認できない、退職代行を中心に報酬を得る仕組みになっているといった事情がある場合には、労働組合としての性質自体が疑問視されます。
このようなケースでは、労働組合という形式にかかわらず、非弁行為として違法と判断される可能性が高くなります。そのため、退職代行を依頼する側としても、組合の実体や活動内容を事前に確認することが重要です。
「その退職代行は違法だ」と会社に言われる理由

労働組合の退職代行を利用した際に、会社から「その退職代行は違法だ」「対応には応じられない」と指摘されることがあります。
このような発言は、必ずしも法的に正しい評価に基づいているとは限りませんが、一定の理由や背景があるのも事実です。まずは、会社側がなぜ違法性を主張してくるのか、その典型的なパターンを理解しておく必要があります。
会社側が違法性を主張してくる典型パターン
会社が違法性を主張する場面で多いのは、退職代行を行っている主体が誰なのか、どこまで踏み込んだ対応をしているのかが分からない場合です。労働組合を名乗っていても、実体が不明確であったり、交渉内容が法的評価を伴うものに見える場合、会社側は非弁行為の可能性を意識します。
また、退職日や有給休暇、金銭の扱いなどについて強い主張が行われた場合、会社としては単なる意思伝達ではなく、法的な交渉を第三者が行っていると受け取ることがあります。こうした場合、違法性を指摘することで交渉を拒否し、自社のリスクを回避しようとする意図が含まれていることも少なくありません。ちなみに大手会社が違法性を指摘する場合、顧問弁護士が背後にいる可能性があることに留意が必要です。話がこじれてしまう前に、こちらも法律事務所に相談するといいでしょう。
会社の指摘が正しい場合と誤解に過ぎない場合
会社の「違法だ」という指摘が正しいかどうかは、退職代行の実態によって判断されます。実体のない名ばかり組合が退職代行を行っている場合や、法的責任の有無を前提に条件交渉を行っている場合には、会社の指摘が一定程度妥当とみなされる可能性があります。
一方で、労働組合に実体があり、団体交渉権の範囲内で意思伝達や労使間のやり取りを行っているにすぎない場合には、会社の指摘が誤解に基づくものであることもあります。会社側が退職代行全般に否定的である場合や、退職を引き止める目的で違法性を強調しているケースも考えられます。
そのため、「違法だと言われた」という事実だけで判断するのではなく、誰がどのような内容で対応しているのかを冷静に確認し、本当に法的な問題があるのかを見極めることが重要です。
違法リスクのある労働組合の退職代行で起こるトラブル

労働組合の退職代行で違法性を疑われる場合、最も影響を受けるのは依頼者本人です。手続きが円滑に進まず、精神的な負担が増したり、想定していなかった対立が生じたりすることがあります。ここでは、実際に起こりやすいトラブルの内容を具体的に説明します。
会社側が交渉を拒否し退職が進まなくなる例
退職代行の対応内容について会社が非弁行為の可能性を感じた場合、会社側が一切のやり取りを拒否することがあります。労働組合を名乗っていても、実体が不明確であったり、交渉内容が法的な判断を含むものに見えたりすると、会社としてはリスクを避けるため対応を止める判断をすることがあります。
このような場合、退職の意思が伝わっているにもかかわらず、退職日や手続きが確定せず、結果として退職が長引くことがあります。本人はすでに退職の意思を固めているため、出社や連絡を巡ってさらに不安が強まるケースも少なくありません。
損害賠償や懲戒処分を示唆されるケース
違法性を主張する会社の中には、損害賠償や懲戒処分を持ち出してくるケースもあります。実際に請求や処分が行われるかどうかは別として、こうした言葉を示されることで、依頼者が強い心理的圧力を感じることがあります。
特に、退職代行を通じたやり取りの中で、退職条件や責任の話題に踏み込んでいる場合には、会社側が従業員を脅すようなケースもあります。実際に訴訟問題に発展すると、労働組合ではどうすることもできません。労働組合の退職代行業者に違法性がなくとも、最初から弁護士の退職代行を利用しておけばよかった、と強く感じるケースとなります。
労働組合の退職代行と弁護士対応の決定的な違い

労働組合の退職代行と弁護士による対応は、同じ「退職を進める手段」に見えても、できることと背負える責任の範囲が大きく異なります。違いを理解しないまま選択すると、想定外の場面で行き詰まることがあります。ここでは、実務上とくに差が出やすいポイントに注目します。
弁護士でなければ対応できない交渉や請求
弁護士は、法律事務を業として行うことが認められているため、退職に伴うあらゆる法的な交渉や請求に対応できます。例えば、未払い賃金や残業代の請求、損害賠償を巡るやり取り、懲戒処分の有効性を前提とした主張などは、弁護士でなければ扱うことができません。
これに対し、労働組合の退職代行では、団体交渉権の範囲を超える対応は違法となりできません。退職条件や金銭の扱いについて深く踏み込んだやり取りが必要になった場合、その時点で対応が止まってしまうことがあります。この点が、両者の大きな違いです。
トラブル発生時の法的対応力の差
退職が円満に進まない場合や、会社から違法性を指摘された場合、どこまで対応できるかにも差が出ます。弁護士であれば、会社からの主張に対して法的根拠を示しながら反論し、必要に応じて内容証明郵便や訴訟などの手段に移行することが可能です。
一方、労働組合の退職代行では、対応できる範囲を超えると、それ以上の手続きを進めることができません。その結果、依頼者自身が別途弁護士を探す必要が生じたり、対応が中断されたまま時間だけが過ぎてしまったりすることもあります。退職に不安要素がある場合ほど、どこまで責任を持って対応できるかという点が重要になります。
労働組合の退職代行に不安がある場合は弁護士法人みやびへ相談を

労働組合の退職代行に不安を感じる場合や、会社とのやり取りが難航しそうな場合には、早い段階で弁護士に相談することも一つの選択肢です。弁護士であれば、退職の意思伝達にとどまらず、未払い賃金や損害賠償、懲戒処分を巡る問題など、法的な対応が必要な場面にも一貫して対応できます。
弁護士法人みやびでは、退職代行に関する相談を含め、状況に応じた現実的な進め方について案内しています。違法性を指摘されて不安になっている場合や、このまま退職が進むのか分からないと感じている場合には、一人で判断せず、専門家に相談することで見通しが立てやすくなります。

弁護士法人「みやび」は全国の「会社を辞めたいけど辞められない」人に退職代行サービスを提供しています。LINE無料相談・転職サポート・残業代等各種請求にも対応しており、2万7500円(税込)から承っています。まずはお気軽にご相談ください。
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労働組合の退職代行と違法性に関するよくある質問
労働組合の退職代行については、「違法なのか」「会社に何と言われるのか」など、不安を感じやすい点が多くあります。ここでは、実際によく寄せられる質問について、実務の考え方を踏まえて回答します。
労働組合の退職代行は本当に違法ではないのですか
労働組合の退職代行がすべて違法というわけではありません。団体交渉権の範囲内で行われる意思伝達や労使間のやり取りであれば、直ちに違法と判断されるものではありません。ただし、対応内容や組合の実体によっては問題になる可能性があります。
会社から「非弁行為だ」と言われたらどうすればいいですか
会社の指摘が常に正しいとは限りませんが、対応内容によっては法的な問題が生じることもあります。誰がどのような対応をしているのかを確認し、不安がある場合は弁護士に相談することが現実的です。
労働組合なら退職条件の交渉もすべて任せられますか
労働組合には団体交渉権がありますが、退職代行の文脈でどこまで対応できるかは内容次第です。損害賠償や金銭請求など、法的な紛争解決に踏み込む対応は注意が必要です。
名ばかり組合かどうかはどうやって見分ければいいですか
組合員の実態があるか、継続的な組合活動が行われているか、退職代行だけを目的とした組織ではないかといった点が一つの目安になります。説明が曖昧な場合は慎重に判断する必要があります。
労働組合の退職代行で退職できなくなることはありますか
対応内容について会社が違法性を疑い、やり取りを拒否することで手続きが進まなくなるケースはあります。そのような場合には、別の手段を検討する必要が生じることもあります。
最初から弁護士に相談したほうがいいケースはありますか
未払い賃金や損害賠償、懲戒処分などの問題が関係しそうな場合や、会社との対立が強くなりそうな場合には、早い段階で弁護士に相談したほうが安心なことがあります。



